2025/04/07 15:17
「焙煎したての新鮮な豆が一番おいしいんですよね?」
お客様からよくいただくこの質問。確かに「焼きたて=新鮮」と思うのは自然なことですが、実はコーヒー豆には“焼きたてならではの問題”があるんです。今回は、焙煎直後の豆に何が起きているのか、そしてそれが味にどう影響するのかをお話しします。
1.焙煎直後の豆は「ガス」を放出している
コーヒー豆は焙煎されると、内部でさまざまな化学反応が起きます。そのひとつが「ガスの発生」。主に二酸化炭素で、豆の内部にたっぷりと溜め込まれた状態になります。
このガスが抜けきらないうちにドリップすると、
・お湯と豆がうまくなじまない(蒸らし時にガスが邪魔する)
・過度に膨らみ、抽出が不安定になる
・香りや味わいが整っていない
といった現象が起き、せっかくの豆のポテンシャルを引き出せなくなってしまいます。
2.「エイジング」で味は落ち着き、調和する
焙煎から1〜2日経つと、豆の内部にたまったガスが徐々に抜け始めます。この期間は**「デガス(脱ガス)」と呼ばれます。そして、ただガスが抜けるだけでなく、香味が落ち着いてまとまりのある味になっていく、このプロセスは「エイジング」**と呼ばれます。
たとえば焙煎翌日には尖っていた酸味が、3日後には柔らかくなり、
苦味とのバランスが整って「この豆らしい味わい」が感じられるようになります。
この「飲みごろ」は豆の焙煎度や品種によっても異なりますが、
目安として中煎りなら焙煎から3〜5日、深煎りなら5〜7日あたりが多いです。
3.「焼きたて=うまい」は本当?プロが語るコーヒー豆の真実
私は注文焙煎を行っています。お客様の注文を受けてから焙煎することで、鮮度の高い豆をお届けできるのが特徴です。
でも、だからといって「すぐ飲んでください!」とは言いません。
焼きたての豆には、時間とともに変化していく楽しさがあるからです。
たとえば:
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焙煎直後:華やかさはあるが、バランスに欠ける
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2日後:香りがまとまり、酸味と甘みの調和が感じられる
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5日後:落ち着きのある丸みを帯びた味に
こんなふうに、同じ豆でも数日おきに味わうと異なる表情が楽しめるのです。
【まとめ】エイジングで「本来の味」が開花する
コーヒーは焙煎した瞬間がゴールではなく、そこから味が育っていく飲み物です。
「新鮮=焼きたて」ではなく、飲みごろ=エイジングが整った時期。この違いを知っておくと、もっと深くコーヒーを楽しめるようになります。
注文焙煎では、そのエイジングの始まりを自分のペースで体験できます。
今日飲む一杯と、3日後の一杯が違う顔を見せてくれる——
そんな「変化」もぜひ、味わってみてください。