2025/04/22 15:58


コーヒーは、赤く熟した実だけを選んで摘むことで、本来の甘さや酸味、香りが引き出されます。
でも、その「収穫のしかた」には、大きく分けて二つの方法があるんです。ひとつは人の手で摘む方法、もうひとつは機械を使う方法。

どちらが良い、悪いということではなく、その土地の環境や人手、そしてコーヒーにかける想いによって、自然と選ばれてきた方法なのです。

一粒ずつ選んで摘む、手摘みのコーヒー


たとえばコロンビアでは、急な山の斜面にコーヒーの木が植えられています。
機械が入れるような平らな場所ではないので、収穫はすべて手作業。しかも、一つの枝に完熟した赤い実と、まだ青い未熟な実が混ざっていることが多いため、「今日はこの実だけ」と選んで摘まなければいけません。

この手間が、コロンビアコーヒーならではのクリーンでフルーティな風味を生み出しています。

また、エチオピアの森の中では、コーヒーが自然に近いかたちで育てられており、人の手で丁寧に摘み取るしか方法がありません。
木々の間を歩きながら、熟した実をそっと摘み取る作業には、まるで森と会話するような時間が流れています。

広い土地だからできる、機械での収穫


一方、ブラジルのように、広大で比較的平らな土地が広がる国では、収穫機が活躍しています。
コーヒーの木の列の間を大きな機械が走り、木全体を揺らして実を落とすという方法。
人の手に比べて早く、広い範囲を一度に収穫できるので、大規模な農園では欠かせない存在です。

ただし、どうしても完熟と未熟の実が混ざってしまうことがあります。そこで最近は、熟度を見分けながら摘む機械も登場し、味のばらつきを減らす工夫がされています。

なぜ手摘み?なぜ機械?その理由は土地と人にある


収穫方法の違いは、そのまま地形や人手の状況に結びついています。

山が多く、機械が使えない国では、自然と手摘みが基本になります。
たとえば、グアテマラやペルーもそう。山の中腹でコーヒーを育てているため、収穫はどうしても人の手に頼ることになります。

逆に、機械が導入されやすいのは、土地が広くて平らな場所。
ブラジルだけでなく、オーストラリアのような新しい生産国でも、機械化が進んでいます。

コーヒーの味を支える見えない手間


手摘みのコーヒーには、多くの人の手と時間がかかっています。
1粒ずつ選んで摘む作業は、想像以上に大変。日差しの下で長時間作業するだけでなく、重いカゴを抱えて斜面を登り降りすることもあります。

だからこそ、そうして収穫された豆には、どこか丁寧で繊細な味わいを感じることがあるのかもしれません。

一方、機械収穫によって収穫量を確保することも、生産者にとっては大切な選択肢です。
人手が足りない農園では、効率的な方法がなければ、そもそも収穫ができないこともあります。

技術が支える新しいかたちの収穫


近年は、AIやロボット技術を使って、完熟した豆だけを自動で収穫できるマシンの開発も進んでいます。
まだ人の手には及ばない部分もありますが、これからの時代、手摘みと機械の中間のような方法が主流になっていくのかもしれません。

一杯のコーヒーの向こう側にある風景


コーヒー豆の収穫方法なんて、普段あまり気にすることはないかもしれません。
でも、今あなたの手元にあるその一杯が、もしかしたら斜面で一粒ずつ摘まれた豆でできているとしたら、少しだけ味わい方も変わるかもしれません。

たとえば、私の店で扱っているこの豆も、まさにそんな風にして収穫されたもの。
収穫の風景に思いを馳せながら飲むコーヒーは、いつもよりほんの少し、心に残るかもしれません。