2025/04/25 15:37
「世界で一番高いコーヒー」と聞いて、どんな味を想像しますか?
濃厚?まろやか?それとも、今までに飲んだことのない風味?
その称号を持つのが、コピ・ルアク(Kopi Luwak)。
インドネシア語で「コーヒー」と「ジャコウネコ」を意味します。
実はこのコーヒー、ジャコウネコが食べて消化したコーヒー豆を、糞から取り出して作るという、なんともユニークな製法なんです。
消化と発酵がつくる、特別な風味
ジャコウネコは果物や昆虫、小動物などを食べる雑食性の動物。コーヒーチェリーもそのひとつです。
彼らが食べたコーヒーの種子(豆)は、体内を通過する間に酵素や微生物の働きで自然な発酵が進みます。
この過程で苦味がやわらぎ、まろやかで丸みのある味わいになると言われています。
チョコレートやキャラメルのような香ばしさを感じることも。
なぜジャコウネコなの?
この製法が広まったのは、19世紀のインドネシア。
当時、プランテーションで働く人々は、自由にコーヒーを飲むことができませんでした。
そこで、山に住むジャコウネコの糞から未消化のコーヒー豆を見つけ、洗って焙煎したのが始まりだと言われています。
偶然から生まれたこの方法は、発酵による独特の風味を持っていたため、やがて「希少で高価なコーヒー」として評価されるようになりました。
ジャコウネコの体内で進む自然な発酵と、酵素による風味の変化は、他の動物では再現しにくく、**“なぜジャコウネコなのか”**という理由のひとつになっています。
実はタイには「象のコーヒー」もある
コピ・ルアクに似た発想で作られているコーヒーが、「ブラックアイボリーコーヒー」。
こちらはタイの象が主役。象の消化器官は長く、時間をかけてコーヒー豆が体内を通過するため、より深く発酵が進むとされています。
一杯あたりの価格は、なんと数万円にのぼることも。
希少さ、話題性、そして味の変化。そのどれをとっても、まさに“贅沢な一杯”です。
高価な理由、そして気をつけたいこと
こうした「動物が関わるコーヒー」が高価な理由は、主に以下の3つ。
希少性:野生または丁寧に管理された環境でしか作れない
手間と時間:採取から洗浄、乾燥、焙煎まで、すべてが特別
ストーリー性:背景にある文化や物語が、価値を高める
一方で、需要の高まりとともに、狭いケージで飼育された動物に無理にコーヒーだけを食べさせるような生産も増えてきました。
これは動物福祉の観点から問題視されており、品質面でも本来の味わいを損なうことがあります。
最近では、「野生採取かどうか」「倫理的な方法で作られているか」が重視され、信頼できるルートで手に入れることが大切になっています。
高価なだけじゃない、コーヒーの奥深さ
コピ・ルアクやブラックアイボリーのようなコーヒーは、確かに特別な一杯。
でも、日常の中にも驚きや感動はたくさんあります。
エチオピアの花のような香り、パナマのゲイシャの繊細さ、ブラジルのナッツのような甘み……
あなたの好きな一杯が、世界で一番価値あるコーヒーになるかもしれません。