2025/05/14 22:24
コーヒーの味を決める要素はいろいろありますが、「どうやって淹れるか」という抽出方法は、その中でもとても大きなポイントです。
今回は、日常でもよく使われる2つの抽出方法「浸漬式」と「透過式」について、それぞれの仕組みや味の出方、使い分けの考え方まで詳しくご紹介していきます。ちょっとした違いが、味にどう響くのか。ぜひ一緒に見ていきましょう。
浸漬式とは?
──お湯にじっくり浸けて抽出
浸漬式(しんししき)は、コーヒーの粉をお湯に浸して、一定時間そのままにして抽出する方法です。フレンチプレスやクレバー、エアロプレス(特定の使い方)などがこれにあたります。

一番の特徴は、粉全体がお湯にまんべんなく触れながら、時間をかけて成分がじっくりと出てくること。お湯と粉のあいだの濃度差(成分の移動の原動力)が少しずつ小さくなっていくため、抽出はゆるやかに進みます。
その結果、味わいはまろやかで一体感があり、口あたりの良いコーヒーになります。浸漬時間やかき混ぜ方を調整すれば、同じような味を再現しやすいのも魅力です。
透過式とは?
──お湯を上から通して抽出
透過式は、コーヒー粉の上からお湯を注ぎ、そのお湯が粉の層を通過することで成分を引き出す方法です。ハンドドリップやペーパードリップ、ネルドリップ、コーヒーメーカーなどがこれに含まれます。

透過式の特徴は、お湯が常に新しい場所と触れることで、抽出がどんどん進んでいくこと。お湯と粉の濃度差が保たれやすく、香りや酸味などの成分がしっかり引き出されます。
その分、注ぎ方やお湯の温度、流れるスピードなどによって味が変わりやすく、少しコツがいるのも確か。でも、慣れてくると「酸味を立たせたい」「香りを強く出したい」といった味のデザインがしやすくなります。
同じ抽出時間でも透過式の方が濃くなる?
よく「同じ時間で淹れるなら、透過式の方が濃くなる」と言われます。
実際に、粉の量やお湯の温度などを同じにして比べてみると、透過式の方が濃度(TDS)が高く出ることが多いです。
それは、お湯がつねに新しい場所を通っていくことで、粉から成分をどんどん引き出すから。濃度差がしっかりあるぶん、抽出が最後までよく進むんですね。
一方、浸漬式はお湯と粉が最初からずっと一緒にいるため、時間が経つとだんだん成分の移動が落ち着いてきます。結果として、透過式の方が「同じ時間」でも濃くなりやすいというわけです。
味わいの違い
──同じ豆でも印象が変わる
たとえば、浅煎りのエチオピアを浸漬式で淹れると、酸味が丸くなり、全体にまとまりのある優しい味になります。でも、透過式で淹れると酸味がシャープに立ち上がり、香りもくっきり。豆の個性がはっきり見える感じになります。
また、深煎りのブレンドを浸漬式で淹れると、まろやかで甘みが引き立ち、コクのある一杯になります。透過式だと、ややキレが出て、後口がスッキリするような味わいになることもあります。
抽出の「考え方」も違う
浸漬式は「すべてを均等に引き出す」イメージ。まろやかで一体感のある味に向いています。
一方、透過式は「必要な成分を狙って引き出す」イメージ。味の変化や香りの層を楽しみたいときにぴったりです。
技術が求められる分、味づくりの自由度が高いのが透過式。どちらも使いこなせると、同じ豆でもさまざまな表情を楽しめるようになります。
どっちを使えばいい?
──シーン別のおすすめ
忙しい朝、手軽に安定した味を楽しみたい:浸漬式
浅煎りの香りや酸味をしっかり感じたい:透過式
深煎りでカフェオレ向きの濃厚な味を出したい:浸漬式
繊細な味の違いをチェックしたい:透過式(または両方)
どちらが「正解」ということはありません。飲むシーンや気分、その日の豆に合わせて選ぶのが一番です。
おわりに
──淹れ方ひとつで味が変わる楽しさ
コーヒーは、産地や焙煎度、粉の挽き方などいろんな要素が絡み合ってできあがる飲み物です。でも、最後に味を決めるのが「どう淹れるか」。
浸漬式と透過式、それぞれの特徴を知っておくと、同じ豆でもまったく違う味を引き出せるようになります。
当店の浅煎りエチオピアは、透過式で淹れるとフローラルな香りが際立ち、爽やかな酸がはっきり感じられます。逆に深煎りのブレンドは、浸漬式でゆっくり淹れると甘みとコクがしっかり感じられて、とてもまろやかになります。
あなたのコーヒータイムが、もっと自由に、もっと楽しくなるきっかけになれば嬉しいです。