2025/05/16 15:25
エスプレッソの表面にできる「クレマ」。カップの中にふわっと浮かぶその泡を見ると、なんとなく「美味しそう」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
けれど、このクレマ、本当に美味しさの証といえるのでしょうか?
今回は、クレマができる仕組みや豆の種類との関係、味とのつながりについて、少し掘り下げてみたいと思います。
クレマの正体とは?
クレマは、エスプレッソを高圧で抽出する過程で生まれるきめ細かな泡の層です。
その中身には、焙煎の際に豆の中に閉じ込められた二酸化炭素や油分、そして挽いた粉の微粒子が含まれています。これらが圧力によって乳化し、ふんわりとした泡になって液面を覆います。
一見すると「うまく抽出できた証」のようにも見えますが、実はそれだけでは「美味しい」とは言い切れないのが難しいところです。
クレマは美味しさの保証書ではない
クレマがたっぷりあると「良いエスプレッソに違いない」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。
いくら見た目が美しくても、肝心の中身が雑味だらけでは意味がありません。
また、クレマは液体の香りを封じ込めてしまうこともあり、むしろ味わいの第一印象を鈍らせてしまう場合も。
つまり、クレマは「美味しさのヒント」にはなっても、「答え」にはならないのです。
豆の種類によるクレマの違い
実は、クレマの出やすさには使う豆の種類も大きく関係しています。
たとえばアラビカ種は、香りや酸味の豊かさが魅力ですが、クレマの量は控えめです。一方、ロブスタ種は油分が多く、泡立ちがよいため、厚く濃いクレマが出やすくなります。
この特性を活かして、イタリアの多くのエスプレッソ用ブレンドでは、ロブスタを10~30%ほど加えるのが定番です。
ただし、ロブスタは苦味が強く、やや土っぽい風味になるため、好みは分かれるところです。
焙煎度とクレマの関係
焙煎の深さも、クレマの出方に大きく関わってきます。
深煎りは豆に多くの油分が残っているため、クレマが出やすくなります。しっかりとした泡立ちで、濃厚な口当たりを演出してくれることもあります。
反対に浅煎りは、オイルが控えめで、クレマは薄くなりがち。そのかわり、果実のような明るい香味や透明感のある風味が引き立ちます。
つまり、クレマの有無や厚みによって、味そのものの善し悪しを判断するのは少し乱暴かもしれません。
プロの現場ではどう評価される?
バリスタの大会やカッピングの現場では、クレマは抽出の技術的な指標として見られることはあります。
たとえば、色ムラがないか、きめ細かい泡かどうかといった点ですね。
ただし、審査の本質はやはり中身。香りや味、バランスや余韻が最終的な評価を左右します。
クレマが厚いからといって、それだけで高得点になることはありません。
まとめ:大事なのは中身の味わい
クレマは確かに魅力的ですし、丁寧に抽出された証ともいえます。けれど、それだけで美味しさを判断することはできません。
本当に大事なのは、そのクレマの下にある液体──つまりコーヒーそのものの味や香りです。
見た目に惑わされず、一口飲んで広がる風味や余韻をじっくり味わう。
それが、コーヒーの楽しさなのではないでしょうか。