2025/04/21 15:36

コーヒーは豆が主役。そう思われがちですが、もうひとつ見落とせない存在があります。それが「水」。
実は、コーヒー液体のほとんどは水でできています。どんなに質の良い豆を選んでも、使う水によってその味わいは驚くほど変わるのです。

特に注目したいのは、水に含まれるミネラルの量。つまり「硬度」です。
水は、カルシウムやマグネシウムといったミネラルの含有量によって、「軟水」か「硬水」に分けられます。

軟水で淹れるコーヒーは、香りや酸が素直に出る


日本の多くの地域で使われている水道水は「軟水」に分類されます。ミネラル分が少ないため、豆の風味をストレートに引き出すことができます。

たとえば、エチオピアのナチュラル精製のような、華やかでベリー系の香りを持つ豆。軟水で淹れると、その個性がきれいに立ち上がります。
クエン酸やリンゴ酸といった明るい酸の輪郭も、はっきり感じられます。

また、グアテマラやコロンビアなどのクリーンで透明感のあるコーヒーも、軟水を使うことで雑味なく仕上がります。
豆の繊細な表情をそのまま味わいたいとき、軟水はとても頼りになります。

硬水で淹れるコーヒーは、コクと深みが際立つ


一方、硬水にはカルシウムやマグネシウムなどの金属イオンが豊富に含まれています。これらは抽出中にコーヒーの成分とさまざまな形で関わり、味わいに変化をもたらします。

そのひとつが、有機酸との錯体形成です。
コーヒーに含まれるクエン酸やリンゴ酸などの有機酸は、これらのミネラルと反応して結びつきやすい性質を持っています。
この結びつきによって、酸味の印象がやや穏やかになり、代わりにコクや厚みが前に出て感じられることがあります。

また、コーヒーに含まれるタンニンやポリフェノールなどの渋み成分も、硬水中の金属イオンと反応することで、ごくわずかな沈殿を起こす場合があります。
紅茶で見られるような濁り(スカム)ほどではありませんが、これによって渋みや苦味がややまろやかになり、余韻が長く感じられることもあります。

深煎りのブラジルやインドネシアのように、ナッツやスパイス、カカオのような風味を持つ豆は、硬水との相性が良く、コーヒーに厚みや落ち着きを与えてくれます。
カフェオレやラテのようなミルクメニューにも向いています。

水を変えるだけで、同じ豆でも印象が変わる


市販のミネラルウォーターを使う場合は、ラベルに書かれている「硬度(mg/L)」をチェックしてみましょう。

100mg/L以下の水(例:南アルプスの天然水、六甲のおいしい水)
 → 香りや酸味を楽しみたいときに。
100〜300mg/L程度の水(例:エビアン、サンペレグリノ)
 → コクや深み、ミルクとの相性を重視したいときに。
硬度が違うだけで、同じ豆でも印象が変わることに気づくはずです。

水も、コーヒーの個性を語るパートナー


コーヒー豆は、それ自体が豊かな個性を持っています。
でも、その表現の仕方を左右するのが水の役割。香りを活かすのか、コクを引き出すのか。
「どんな豆を選ぶか」と同じくらい、「どんな水で淹れるか」を考えるのも、コーヒーの楽しみ方のひとつです。

もし気になる豆があれば、「どんな水と合わせると引き立つだろう?」と想像してみてください。
当店では、香り豊かなシングルオリジンから、ミルクと相性のいい中深煎りまで、いろいろご用意しています。
水と豆の組み合わせも、ぜひ楽しんでみてください。