2025/06/27 17:32

インドネシアのスマトラ島で生産される「マンデリン」は、世界のスペシャルティコーヒーの中でもひときわ異彩を放つ存在です。その豊かなボディ、湿った土やハーブを思わせるアーシーな香り、深煎りに耐える強靭なキャラクター。プロの現場では、マンデリンはその特異な風味からブレンドの柱にも、単体での個性派にも使われる奥深い豆として扱われています。

この記事では、マンデリンを語る上で欠かせない6つの視点から、その魅力と背景を掘り下げてみましょう。


1. マンデリンとは何か?

「マンデリン」とは本来、スマトラ島北部の「マンデリン族」に由来する名前ですが、現在では「スマトラ式精製で仕上げられた、インドネシア北部産のアラビカ種コーヒー」を指すのが一般的です。品種はティピカ系統が多く、スマトラ島の標高1000〜1600mの火山地帯で栽培されています。

風味の特徴としては、深みのある苦味、ハーバル(薬草・漢方的)、そして独特のアーシー(土のような)香りが挙げられます。華やかさよりも重厚さ、鋭さよりも厚みのある味わいが魅力で、「マンデリンでなければ出せない味」が確実に存在します。


2. スマトラ式(ウェットハル)精製が生む独特のキャラクター

マンデリンの個性を語る上で欠かせないのが、現地特有の精製法「スマトラ式(ウェットハル)」です。これは、果肉除去後にパーチメントの状態で半乾きのまま脱殻し、その後、裸の生豆の状態で天日乾燥させるというプロセスです。

この方法は高湿度のスマトラの気候に適したもので、乾燥機が乏しい中での知恵でもあります。通常のウォッシュト精製に比べて、豆の水分値が高い状態で脱穀するため、風味には次のような傾向が出ます:

  • ボディが厚くなる

  • アーシー、ウッディ、ハーバルな香味

  • 味のバラつきが出やすい

プロの現場では、この「粗さ」も含めてマンデリンの魅力と捉え、あえてスマトラ式の持つ野性味を活かした焙煎・抽出が選ばれます。


3. 産地ごとの個性:「Lintong」「Aceh Gayo」「Dolok Sanggul」など

マンデリンの名の下には、実際にはいくつかの主要産地があり、それぞれに個性があります。

  • リントン(Lintong)
    トバ湖周辺の高地。クラシックなマンデリンの風味とされ、バランスが良く重厚なアーシー感。

  • アチェ・ガヨ(Aceh Gayo)
    スマトラ島北端。標高が高く、比較的クリーンで華やかな酸を持つこともあり、近年スペシャルティ評価が高まっています。

  • ドロク・サングール(Dolok Sanggul)
    ハーバルでスパイシーな風味が強調される、玄人好みのロットが多い。

これらのロットを飲み比べると、同じ「マンデリン」と呼ばれる豆の中に、実に多様なキャラクターがあることがよくわかります。


4. 深煎りだけではない:焙煎度によって変わるマンデリンの顔

マンデリンは「深煎り向き」という評価が多く見られます。実際、スマトラ式の持つアーシーさやボディ感は、フルシティ〜フレンチローストにすることでビターチョコのような濃厚な風味へと昇華されます。

しかし、中煎りで焙煎すると、全く別の表情も見えてきます。特にG1等の高品質ロットでは、スパイス感の奥に熟したプラムやドライフルーツ、あるいはベルガモットのような柑橘系の酸味が顔を出すことがあります。

プロとしては、「深煎り一択」と決めてしまうのではなく、そのロットに対してどの焙煎度が一番香味を引き出せるのかを都度判断する姿勢が求められます。


5. 「アーシー」とは何か?香味を言語化する試み

マンデリンの説明には「アーシー(Earthy)」という言葉がよく登場します。しかしこの言葉は曖昧でもあり、初心者にはピンとこないことも多いです。

実際のカッピングでは、以下のような表現で補足されることが多いです:

  • 湿った黒土、腐葉土、シダ植物のような香り

  • ターメリックや漢方のようなハーバル感

  • 墨汁や鉱物的なミネラル感

こうした香りを嗅ぎ分け、言語化していく訓練は、プロの評価眼を養う上でも重要です。マンデリンはその教材としても非常に適しています。


6. カッピングから見える「良いマンデリン」の条件

プロのカッピングでは、マンデリンに対して特有の視点で評価を行います。

  • クリーンカップ:スマトラ式特有の「濁り」がないか

  • ボディの質感:厚いだけでなく滑らかさがあるか

  • 後味の持続性:ビターな余韻が心地よく続くか

  • 欠点豆の混入率:特にスマトラ式では形状不良が多くなりがち

カッピングでの見極めが、その後の焙煎プロファイル設計に直結するため、マンデリンの評価には細やかな注意が必要です。


当店でも新登場。深煎りマンデリン、その圧倒的な存在感をぜひ

この記事でご紹介したように、マンデリンは他のどのコーヒーにもない「重厚さ」と「深み」を持った特別な豆です。当店でもこのたび、新商品として深煎りのマンデリンをご用意いたしました。

https://kadelcoffee.base.shop/items/97301536

スマトラ式精製ならではのアーシーな香り、しっかりとした苦味、そして厚みのあるコク。深煎りでありながら、後味は驚くほどクリーンに仕上げており、毎日のコーヒーとしても、特別な一杯としてもお楽しみいただけます。

ミルクとの相性も抜群で、カフェオレにするとビターなチョコレートを思わせる風味が引き立ちます。
重厚なコーヒーを探していた方にも、マンデリンを初めて試す方にもおすすめです。

現在、BASEのオンラインストアにて数量限定で販売中です。
ぜひこの機会に、マンデリンの真骨頂を味わってみてください。